数学から美術へーふにゅの場合
こんにちは。ふにゅです。
前回は初ブログで日曜数学会のAdvent Calendarに参加させて頂きました。
多くの人に見て頂けたようで驚きながらもとても嬉しく感じています。
さて、今回はなぜふにゅが数学から美術へ転向したのか、両者の関係性をみながら書いてみたいと思います。画像の権利上リンクばかりになってしまいますが、ご容赦ください〜。
・数学から美術へ
実は数学と美術、とっても関係あるんです!
関係ないと思ってたでしょ〜。どうせまた黄金比の話だろと思ってたでしょ〜。
確かにそれこそギリシアから数と美については散々議論され、数学の持つ美的な側面に魅了されて数学をしてる人がほとんどだと思います。
しかしせっかくなので、もっと美術に突っ込んでみたいと思います。
私の専門とする時代は近代なのですが、調度その時代の数学界では「石膏で模型を作る」ことか流行しました。*1
東京大学の数理科学研究科に所蔵されています。
こんな感じ。
◆数理科学研究科所蔵の幾何学模型
実はこの模型が、近代の芸術潮流のひとつシュルレアリスムの画家達の目に留まるのです。
・オブジェの発見
シュルレアリスムとは、1920年代に、フランスで「無意識や夢、偶然」を重視した思想のもとに広まった芸術運動です。フランスで始まった文学を基盤とした芸術運動でしたが、その中心人物であったアンドレ・ブルトンらと交流のあった画家達の間で、芸術の分野にまで広まりました。自動記述、デペイズマン、コラージュなどの独特な技法が生み出されます。
河野さんの論文によると、ドイツのシュルレアリストであるマックス・エルンスト(Max Ernst、1891-1976)がパリのポアンカレ研究所で模型を発見し、シュルレアリストに広めたということですね。発見しちゃったんだな〜いいオブジェを。だってこの模型ちょっと欲しいですもんね。
そのエルンストさんは『ユークリッド』という作品を描いています。
◆マックス・エルンスト《ユークリッド》1945年
まずタイトルからして好きですこれ。
あ、ちなみにエルンストさんは私が一番好きな画家だったります。ちょっとメンヘラなところがいいんですよね。
また、シュルレアリストの写真家マン・レイさん(Man Ray、1890-1976)はこんな感じで幾何学模型からインスピレーションを得た作品をたくさん残しています。
◆マン・レイ《Mathematical Object》c.1900 他
http://www.glyptoteket.com/whats-on/calendar/man-ray-human-equations
マン・レイさんの作品見ると、模型をそうとう気に入ったのが伝わりますよね。
しかし、実は数学的なモチーフが絵画に出現するのはもっと前から例があります。
有名なものはアルブレヒト・デューラー(Albrecht Dürer、1471-1528)の メランコリアでしょうか。
◆アルブレヒト・デューラー《メランコリアⅠ》1514年
これ行列が入っているんですよ!!!!!味わい深くないですか?
私は多角形の立体のほうが気になりますけども。
というように、ここまで見てきた作品は割とわかりやすく数学がアートに取り入れられています。
しかし、幾何学的モチーフを絵画にした作品だけではありません。
北脇昇という日本のシュルレアリストは数式をタイトルにしたこんな作品を残しています。
◆北脇昇《(A+B) 意味構造》(1940年)
(A+B)^2=A^2+2AB+B^2という数式と植物の成長過程を対応させた作品です。芸術家はこんなことも思いつくんだなあ…。すごい。
・黄金比だけじゃない!
このように、黄金比以外にも数学と美術には交差点がたくさんあります。数学というとどうしても数字にとらわれてしまうところがありますが、概念そのものだったり、形だったり…アプローチの仕方はたくさんある。数学を用いた芸術作品を見ると、数学の持つ様々な魅力に触れることができます。
私は、数学者の方にはぜひ美術館に行って欲しいなと思っています。特に抽象絵画なんかは、一見難しそうでも「むむっ…この曲線の曲率はもしかして…。」なんて事があるかもしれません。
もしそんな作品を発見したらぜひ私に教えてください。共同研究しましょう(笑)
・電位差のあるところ
さて、数学と美術の関係が意外と深いことを超絶ざっくりと紹介しましたがいかがでしたか。
ここでちょっと高校の物理を思い出してみてください。鉄球同士が離れていれば離れているほど、つまり電位差があればあるほど、鉄球がぶつかった時に放たれるエネルギーは大きくなりますよね。
数学と美術という一見離れたところにあると思っていたものがぶつかった瞬間。私はそれを体験しました。その時の体験が忘れられず、こんなところで繋がっていたのか!で、君たちどんな関係なの?というのが私の研究のモチベーションのひとつとなっています。
数学から美術へ。このブログをきっかけにどちらも面白いと感じてもらえたら嬉しいです。
今回はここまでといたします。
ガロアがイケメンな件―数学とイメージの関係
・この記事は日曜数学 Advent Calendar の18日目のための記事です。
・自己紹介
初めましてふにゅと申します。今年に入ってから、日曜数学会のことを知り、
以前数学科に所属していたことから興味を持っていました。
今回は勇気を出してブログという形で、私が好きな数学者であるエヴァリスト・ガロア(1811-1832)がイケメンな件について、イメージとの関係をゆるゆると考えながら書いていきます。
・数学をはじめたきっかけ
さて、初めにお断りしておきますが私は数学が非常に苦手です。
高校生のときの数学の成績は散々で、毎週ある小テストでは毎回居残り。先生にも「またお前か」と呆れられていました。
しかし数ⅢC・がやりたくて理系に進みました。するとなぜかsin,cosやe^xを使った微分積分は面白いようにできたのです。それが数学科に行きたいと思ったきっかけでした。
そこで調子に乗って大学も数学科に進学するわけですが…元々は数学が苦手、まず二桁の足し算から苦手なので、大学の数学は正直チンプンカンプンでした。
しかも私が数学科に入った時に同期に女性が1人もおらず、孤独に数学と戦うことになってしまったのです。
・ガロアとの出会い
数学科に所属していたかたはわかるかもしれませんが、数学徒はオタク…シャイな方が多いように思われます。だから、教室にこんなに麗しく可憐な乙女がいても笑 誰一人積極的に話しかけてはくれない。授業の課題やレポートがわからなくても聞ける人がいない…。せいぜい隣に座った人に勇気を出して尋ねるか、ガンガン発表してるデキる人に話しかけて教えてもらうかしか出来ませんでした。
私は授業についていけなくなり徐々に講義に出なくなりました。
ある演習のテストでは、私の白紙の答案用紙を見た先生が黒板にヒントを出そうと書き始めたことに、自分自身への情けなさから「私は理解出来ていないので単位はいりません!!!」と叫んでしまったこともあります。
しかし出会ってしまったのです。運命の彼と。
ある日代数の勉強をしているとそこにいたのは…
「なんだこのイケメンは!!!!!」
ガロアの肖像画を見た瞬間、私はこう思いました。このイケメンは誰だ…どんな数学者なんだ…す、好きな人とかはいるのか…!?
と瞬時に頭がフル回転。これが私とガロアの出会いでした。
・ガロアに恋をする
恋をすると好きな人のことをもっと知りたくなりますよね。私は早速代数の授業に出てガロア理論を勉強しました。
あのイケメンがどんなことを考えていたいのか知りたかったからです。それをきっかけに他の授業にも出席し、危うかった留年もせず卒業できました。
ガロアがいたから、好きな人がいたから数学を頑張れた。
私が挫折を経験しながらも、今も数学を好きでいられるのは、ガロアのおかげだと思います。もっと言うと、ガロア理論のイメージしやすさにあると思います。
・イメージのしやすさ
ところで「イメージのしやすさ」これは数学を理解する上で大きなポイントとなるのではないでしょうか。
数学科にいただけでたま〜に数学を教える機会が来ることがあるのですが、そこで毎回言われるのは「絵に描いて!」ということです。そしてやはり私が数学を挫折した理由も、高度な概念を直観的にイメージ出来なかったところにあります。
わけのわからない記号が複雑に組み合わさった数式だけ見て「ああ、こういう構造になってるのね」ってすぐにイメージできるのか、といったらできない人がきっと大半なんです。そして数学ができる人は、それが想像できる力にとても長けているのだと思います。
ですから、その状態で私がガロア、そしてガロア理論に出会えたのはとてもラッキーな出来事でした。なぜならガロア理論はイメージしやすく、図にも描いて説明することが出来るからです。
ここにも掲載されていますが、体同士の関係図をかくことができますよね。
これってすごくわかりやすいと思うんです。例えば多くの人物の関係性を言葉でズラズラ言われても頭に入りませんが、相関図のように矢印を使ったり、視覚的に位置関係を把握することでスッと理解することができます。
私はガロア理論を学んだとき、そんな感覚でした。あ、ちゃんと数式がイメージになって頭のなかに展開できる…と。
当時は代数の分野でなぜこんなに視覚的な側面を持っているのだろうと疑問でしたが、加藤文元先生の本*1を読ませていただいたところ、ガロアと数学との出会いはルジャンドル*2の『幾何学原論』であったことがわかりました。これはあくまで私の推論ですが、やはり視覚的に強い理論を構築できたのは根本に幾何学があるからではないでしょうか。
そして、「イメージのしやすさ」は同時に「わかる」という喜びを与えてくれるものであると思います。人は頭に絵を描くことができたとき、理解できたと感じるのではないでしょうか。そう考えると視覚的なわかりやすさを以て数学を伝えることは非常に重要なことであると考えています。
・ガロア自身をイメージする
さて、ここで話題を変え、タイトルにもあるようにガロア自身をイメージしてみたいと思います!
ただし、これらは完全にオタク系女子ふにゅの妄想です。
妄想のためにガロアの生涯について少し振り返ってみましょう。
肖像画を見ると、いかにもインテリでクールなイメージがしますが、その生涯を振り返ると、実はとても熱くかなりアグレッシブな性格の持ち主だったようです。
数学へかける情熱はもちろん、若くして政治運動にも積極的に関わり、特別措置を経て入学したエコール・プレパラトワールも、校長への政治批判が原因で放校処分にされています。
このようなエピソードからみれば、いわゆるオラオラ系であることは間違いないはず。
そして髪は絶対に赤髪です!!(完全に私の好み)
しかし、2度にわたる受験の失敗や、父の自殺、論文の紛失やリジェクトなどという非常に辛い経験を持つことから、本当は繊細で気弱な一面もあったのではないでしょうか。絶対に皆の前で弱みは見せないで、一人で泣いたりしてただろうな…。
そしてガロアといえば決闘で命を落としたと言われていますね。それが何の決闘であるかは諸説あるようですが、恋の決闘に敗れたという説もあります。しかし、加藤先生の本を読んでみると、その恋もガロアの一方的なものであったように思われます。
好きなことに一生懸命で、真っ直ぐで、でもすごく不器用で…。
なんというか…本当にガロアを抱きしめたいよ、私は。
しかしこのような劇的ともいえるエピソードの多くが、ガロアという人物を偉大な数学者としてだけではなく、人間的に多くの人を引きつける人物として私達を魅了していることは間違いないでしょう。
さて、ちょっと妄想も進んだところで最後にガロアに言って欲しいイケメンなセリフを発表して終わりにしたいと思います。ガロアの残したとされる有名なフレーズに絡めていきたいと思います。いきますよ?
「俺には時間がない。
だから今すぐお前を俺のものにしたい。」(CV : 柿原徹也)
どうですか〜〜〜〜!?!?!?(鼻血)
「お前」=「ガロア理論」だと考えたら、さらにイケメンな感じがしませんか?え?CV?私の好みです。
実はイラストが得意なふにゅは、イケメンなセリフを言わせたイラストも描く予定だったのですが、PCが不調によりまたの機会に披露できたらと思います。
数式や理論なんかもイケメンにして、乙女をキュンとさせたいという野望もありますし。実は紆余曲折あり今は美術史を専門としているので、数学史的な記事になってしまいましたが、数学とアートという切り口で今後活動できたらなと思っています。
この度は、初挑戦のブログにお付き合い頂きありがとうございました!
次はmattyuu123さんの「ラグランジュの未定乗数法について」ですよ。懐かしい!!これを機にもう一度復習したいと思います。